娘が近くに住んでいると、「ちょっと見ててくれる?」「明日、保育園がお休みで…」と、孫のお願いごとが増えていきます。
かわいい孫ですし、最初はただただうれしくて、「いいよ、任せて」と笑顔で引き受けることも多いと思います。
でも、ここに小さな落とし穴があります。
それは、最初は「お願い」だったものが、いつのまにか「してもらって当たり前」になっていくことです。
たとえば、最初は
「本当に助かった、ありがとう」
と言っていた娘が、回数を重ねるうちに
「明日もお願いね」「その日は空いてるでしょ?」
と、予定も聞かずに決めてしまう。
こちらが
「その日は友だちと約束があって」
と断ろうとすると、
「あ、そう…」と明らかにトーンが下がる。
中には「おばあちゃんなんだから、そのくらい見てよ」と言われて、胸がチクッと痛むこともあります。
また、こんな相談もよく届きます。
「共働きの娘夫婦のために、週3回、朝から夕方まで孫を見ています。
うれしい反面、正直とても疲れます。
でも『無理』と言ったら、娘たちの生活が回らなくなるのでは…と思って言えません。」
「旅行に行く予定を伝えたら、『その週どうするの?困るんだけど』と不機嫌になられてしまって…。
私の人生はいったい何なのだろう、とむなしくなりました。」
どれも、「誰が悪いか」という話ではなく、「決まりごとがないだけ」なのだと思います。
娘も「助けてもらえる」ことに、だんだん慣れてしまっているだけ。
そしてあなたも、「してあげられるうちは、できるだけ応えたい」と思って、がんばりすぎてしまっているだけなのです。
いちばん大切なのは、「預かる側のスタンス」を、自分の中ではっきりさせておくことです。
「週に1回まではOK」
「急な当日依頼は断る」
「自分の予定を変えてまで無理はしない」
こうした自分なりの“目安”を、心の中に持っておく。
そのうえで、一度ゆっくり娘夫婦と話をしてみることです。
「あなたたちを応援したい気持ちは変わらないよ」
「でもね、私にも体力や予定があるから、ここまではできるけれど、ここから先は難しいの」
「どうしたらお互いに気持ちよくやっていけるかな?」
こんなふうに、「いや」「無理」と突き放すのではなく、「私はこういうペースだと、続けやすい」という伝え方をしてみてください。
境界線を引くことは、冷たいことではありません。
むしろ、「ここまでは安心して頼っていいよ」というサインになります。
孫を大切に思う気持ちと、自分の人生を大切にする気持ち。
どちらも、同じくらい尊重していいのです。
そのための「ひとつの線」を、どう引いていくか。
それが、孫育てをきっかけに、親子関係をこじらせないいちばんのポイントです。