
子育てがひと段落して、ようやく自分の時間ができた。「これからは、自分の好きなことをしよう」そう思ったはずなのに、いざ時間ができると、何をしたいのかわからない。
そんな方は、意外と少なくありません。長い間、妻として、母として、家族を優先して生きてきたから、急に「自分のために」と言われても、気持ちがすぐには切り替わらないのです。
そして、もうひとつ見逃せないのが、母親への遠慮です。私たちは知らないうちに、母親の生き方を基準にしていることがあります。母と同じように生きようとする場合もあれば、「私は母みたいにはならない」と、正反対の道を選ぶ場合もあります。一見すると逆の生き方ですが、どちらも母親を基準にしている、という点では同じなのです。
たとえば、お母さんがずっと専業主婦だった方。
子どもが手を離れて仕事を始めたり、趣味で外出する日が増えたりすると、「家のことをちゃんとしないで出かけていいのかな」「夫に悪い気がする」と、なぜか罪悪感が出てくることがあります。
逆に、お母さんが仕事で忙しく、家にいないことが多くて、子どもの頃に寂しさを感じていた方は、「私は家族を寂しくさせたくない」と、家にいることを優先してきたかもしれません。本当はやってみたい仕事や学びがあっても、家を空けることに強い抵抗を感じることもあります。
また、「母はずっと苦労していた」「母はかわいそうだった」と感じている方は、自分だけ楽しんだり、自由になったりすることに、どこか申し訳なさを持つことがあります。
旅行に行きたい。新しい服を買いたい。習いごとを始めたい。友人と食事に出かけたい。
そんな小さな願いにさえ、「そんなことにお金を使っていいの?」「家族を置いて楽しんでいいの?」と、心の中でブレーキがかかるのです。
でも、ここで一度、考えてみてほしいのです。
お母さんの人生と、あなたの人生は別のものです。そして、お母さんが生きてきた時代と、今では、女性の選択肢も大きく変わっています。昔は選べなかったことが、今は選べる。それは、お母さんを否定することではありません。むしろ、「お母さんは、お母さんの時代を精いっぱい生きた」そう見られるようになると、自分まで同じ苦労を背負わなくてもいいと思えるようになります。
やりたいことは、頭で必死に探しても、すぐには見つからないことがあります。だから最初から「これが私の生きがい」と決めなくてもいいと思うんです。
少し気になる場所に行ってみる。前から興味があったことを体験してみる。気の合う人と会ってみる。
同じように「これから自分の人生を楽しみたい」と思っている人がいたら、ぜひ外に出て会ってみてください。やりたいことは、考え続けた先で見つかるというより、動いた先で「あ、これ好きかも」と気づくことのほうが多いのです。
子育てが終わったあとに始まるのは、残りの人生ではありません。ここからが、自分の人生を生き直す時間なのだと思います。