
お金が入ってくるようになったのに、なぜか心は前より落ち着かないことがあります。
収入が増えれば、欲しかったものが買える。旅行にも行ける。将来のために貯金もできる。だから本来なら、安心も増えていきそうです。ところが実際には、お金が増えたことで、逆に不安や孤独が大きくなる人もいます。
ひとつは、「お金で埋められないものまで、お金で埋めようとする」からです。
たとえば、仕事で嫌なことがあった日に、少し高い服やバッグを買う。家族との関係がうまくいかない時に、旅行や外食を増やす。買った瞬間は気持ちが上がるし、「これだけ持っていれば大丈夫」と思えることもあります。
でも、その安心は長く続きません。すると、もっと欲しくなる。もっと貯めておきたくなる。そして今度は、「これがなくなったらどうしよう」という不安まで一緒についてきます。
お金は生活を守ってくれる大切なものです。でも、さみしさや「誰かに大切にされたい」という気持ちまで、ずっと埋め続けてくれるわけではありません。
もうひとつは、「自分の価値」と「稼ぐ金額」がくっついてしまうことです。
仕事をがんばって収入が増え、周りから「すごいね」「成功したね」と言われる。最初はうれしいのですが、それが続くと、「私は稼げるから価値がある」「結果を出せるから認めてもらえる」と思うようになることがあります。
すると、仕事を休むのが怖くなる。売上が落ちると、自分まで落ちたような気持ちになる。年齢を重ねて、今までと同じように働けなくなることを想像しただけで、不安になる。
本当は、収入が減っても、その人の価値まで減るわけではありません。でも心の中で二つが強く結びついていると、「稼げなくなった自分」を受け入れにくくなってしまいます。
そして、お金が増えるほど、人を疑いやすくなることもあります。
久しぶりに連絡をくれた友人に対して「私に何か頼みたいのかな」、親しくしてくれる人に「お金があるから近づいているだけでは?」、と思ってしまう。食事をごちそうしても、「この関係は私がお金を出しているから続いているのかも」と不安になる。これでは、どれだけ人に囲まれていても、心から安心することができません。
お金そのものが、人を不幸にするわけではないと思います。むしろ、お金があることで選べることは増えますし、守れるものも増えます。
ただ、お金に「安心」「自分の価値」「人とのつながり」まで全部背負わせてしまうと、お金が増えるほど失う怖さも大きくなります。
だから大切なのは、お金を増やすことだけではなく、「お金がなくても、私は大切にされる」「稼げない時があっても、私の価値は変わらない」「この人は、私のお金ではなく私自身とつながっている」と思える感覚を、少しずつ持てることなのだと思います。
お金は人生を豊かにしてくれる大切な道具です。でも、心を満たす役割まで全部お願いしないことも、大切だな、と思います。