「寄りそうだけでいい」〜共感と同調のちがいをやさしく解説〜

「共感と同調って、どう違うの?」

そう聞かれたら、私はまずこう伝えます。

共感は“寄りそうこと”。

同調は“背負ってしまうこと”。

人の話を聞いている時、相手のつらさがそのまま自分の胸に入ってくるように感じる…。

40〜60代の女性から、よく相談されることです。

たとえば、

・娘さんが職場でつらい思いをした話を聞いた後、自分の胃まで重くなる

・夫が会社の人間関係で落ちこんでいると、自分まで気分が沈む

・友人の家庭の悩みを聞いた翌日、なぜか体がだるい

こうした反応は、やさしい人ほど出やすいものです。

でも実はこれ、「共感」ではなく「同調」になっている可能性があります。

共感は、「あなたの気持ち、わかるよ」とそばに立つこと。

相手の気持ちを大事にしながらも、自分の心はその場に留まりません。

一方で

同調は、「あなたの苦しみを私も感じている」と中に入りこむこと。

相手の悲しみや不安を、まるで自分のことのように受け取ってしまいます。

同調が続くと、心も体もすぐ疲れます。

その疲れは、ある日どっとやってきます。

「誰の人生を生きているんだろう…」という、あの空しさも同調から生まれます。

さらにやっかいなのは、同調してくれる人には、相手が“甘えやすくなる”という点です。

誰かの気分の浮き沈みに引っぱられ、気がつけば相手の不安を受け取る“役わり”になってしまうこともあります。

心を守るためには、**「共感はするけれど、同じ苦しみまでは背負わない」**という姿勢がとても大切です。

これは冷たいわけではありません。

むしろ、本当に相手を支えるための方法です。

たとえば娘さんがつらそうな時、

「その気持ち、わかるよ。どうしたら少し楽になれそう?」

と声をかけるだけで、あなたは“寄りそう”側に立てます。

背負わなくても、寄りそうことはできます。

人の痛みに気づけるのは、あなたのやさしさです。

その力を弱らせないためにも、ぜひ“共感の距離”を意識してみてください。

自分をすり減らさないやさしさは、今日から身につけられます。