自分らしく生きたい。
そう思いながらも、気づけば「母として」「妻として」「娘として」の顔ばかり優先してきた、という相談をよく受けます。
そんなときに一緒に見直すのが、次の3つの視点です。
一つ目は「親離れ・子離れができているか」です。
たとえば、すでに社会人の娘のことを、一日の中で何度も思い出しては心配してしまう。
息子からのLINEの既読がつかないだけで、夕方まで落ち着かない。
子どもが二十歳を過ぎても、一日十五分以上は子どものことで頭がいっぱいなら、心がまだ子どもにくっつき過ぎているサインかもしれません。
反対に、親の一言が今も強く心に響きすぎる場合は、「親離れ」がテーマになります。
「こんなことをしたらがっかりされるかな」と親の顔色で、自分の選択を決めていないか、一度見つめてみてください。
二つ目は「これまでやってきたことの棚卸し」です。
専業主婦の方から「私、何もしてこなかったんです」と聞くことがあります。
でも話を聞くと、引っ越し、子育て、PTA、親の通院の付きそい…毎日誰かのために動いてきた人生だったりします。
紙を一枚用意して、十代、二十代、三十代…と年代ごとに「やってきたこと」「大事にしてきた人やこと」を書き出してみてください。
おむつ替え、夜泣き、毎朝のお弁当づくり、家計を守る工夫…。
書いているうちに「よく頑張ってきたな」と、自分への見方が少しずつ変わっていきます。
三つ目は「十年後、どうなっていたいかを考える」ことです。
今の生活が十年このまま続いたときの自分を、そっと想像してみてください。
その姿を思い浮かべたとき、胸がふっと軽くなるでしょうか。それとも少し重くなりますか。
もし「このままは、ちょっとしんどいかも」と感じるなら、今がターニングポイントです。
いきなり大きく変える必要はありません。「今、どうしたいか」「今日、何を選ぶか」を少しだけ変えてみること。
たとえば、週に一度は自分のための時間を予定に入れる。
親や子どもの相談に乗る前に「今の私は、どれくらい余裕がある?」と自分に聞いてみる。
そんな小さな一歩の積み重ねが、十年後の自分を静かに変えていきます。
自分らしく生きるとは、誰かを切り捨てることではありません。
これまで「夫」「子ども」「親」のために差し出してきた椅子の横に、「自分」という椅子を一脚、そっと並べ直すことです。
この3つの視点を持ち直したとき、「本当はこう生きたい」という自分の声が、少しずつ聞こえ始めてきます。