「やりたいことがわからない」から抜け出す、小さな一歩

「やりたいことがわからない」
「何をしたらいいのか決められない」。

そんなふうに感じている人の多くは、とてもまじめで、ずっと周りに気をつかって生きてきた人です。
小さいころから「自分がどうしたいか」より、「親が喜ぶか、悲しむか」を先に考えるのがあたり前になっていたのかもしれません。

進路を決めるとき、「本当はデザインを学びたかったけれど、親が安心しそうな会社員になった」。
服を買うときも、「自分が着たい服」ではなく「母にほめられそうな服」をえらんできた。

そうやって長いあいだ、自分より親の気持ちを優先していると、「本当はどうしたいのか」という声はだんだん小さくなり、
気づけば自分でも聞こえなくなっていきます。
その結果、「私って何をしたいんだろう?」と考えても、頭が真っ白になってしまうのです。

では、大人になった今、「本当は何をしたいのか」を思い出すにはどうしたらいいでしょうか。

一つ目は、子どものころをたどることです。
アルバムを開いて、小さいころの自分を見てみてみる。
どんな場面で、いちばんうれしそうな顔をしてるかな?
いとこや昔の友だちに「小さいころの私は、どんな子だった?」と聞いてみる。
すると、「一人で物語を作っていたよ」「いつも歌っていたよ」など、忘れていた一面が返ってくることがあるかもしれません。
子ども時代の写真や落書きノートは、今の自分につながるヒントの宝さがしです。

二つ目は、日常の小さな場面で「自分の気持ちを選ぶ練習」をすることです。
たとえば、「晩ごはん、何がいい?」と聞かれたとき。「なんでもいいよ」と口ぐせで答える前に、
「本当は何が食べたいかな?」と自分に聞いてみます。
洋服をえらぶときも、「みんなにどう見られるか」より、「今日の私が落ちついて過ごせるのはどっちかな?」と考えてみる。
そんな小さな選択をくり返していくうちに、すこしずつ自分の感覚が戻ってきます

セッションに来られた方の中にも、「ずっと親の希望に合わせてきて、やりたいことがわからない」と話されていた方がいます。
その方は家に帰って、子どものころの作品やノートをひさしぶりに開きました。
「あ、私、本当は何かを作るのが好きだったんだ」と思い出し、今は休みの日に小さなアクセサリーを作っています。
「特別な才能があるわけじゃないけれど、その時間の自分は好きだと思えた」と、しみじみと話してくれました。

自分の気持ちを取り戻すことは、「親を大事にしない」ということではありません。
親の思いを受け取りながらも、「私はこうしたい」という自分の声にも、少しずつ場所をあげていくことです。

「やりたいことがわからない」と感じるときは、ダメな自分を責めるサインではなく、「そろそろ自分の番だよ」という心からのメッセージかもしれません。
あせって大きな答えを探そうとせず、小さな自分発掘を続けてみてください。
その中でふと、「あ、これをしている時間は好きだな」と感じる瞬間が出てきたら、それがあなたの「やりたいこと」への入り口になっていきます。